見るなキタ━(゚∀゚)━!

トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

ジャンプ+『彼女の遺影を変えたい』

ジャンプ+の前後編読み切り『彼女の遺影を変えたい』の感想です!

 

shonenjumpplus.com

 

 

あらすじ

浪人してた主人公がクラスメイトだったけど全然知らない人の葬式に呼ばれる。葬式にはほとんど誰も参列してなくて、死んだ子の母親から「友達が一人でもいて良かった」と感謝されてしまい、主人公はこんなことなら友達にくらいなっとけばよかったな、と思った矢先事故って死ぬ。

と思ったらなんと高校3年の初日に時間が戻っている。

ならば、死んだあの子と友達にならなきゃ!と仲良しになる話

 

感想(前置き)

歯に衣着せるのがだるいので思ったこと思ったままに書くよもう。なんか言い方悪いなあみたいな瞬間あったらごめんね。気持ちよくなる液体とか飲んで忘れてくださいね。

 

感想(本番)

これね、もう単純に面白かった!

まじで全くひねりが無いんだけど、ストレートに「友達に笑ってて欲しい!」ってことを描くだけでこんなに面白くなるんだなあ。

だって最近の漫画ってどんだけ悪意を露出できるか勝負じゃん。

まあ映画やアニメと違って一話単位が数十ページしかなくて、その中で他の漫画をぶっちぎって目を引こうと思えばそれも致し方なしではあるけどさ。

余談になっちまったな…

 

適当に好きなところを列挙していきます。

まず主人公のキャラが良いよね。内心は結構明るいんだけど、人見知りだから上手く喋れなくて友達いないってのが、映画の『ワンダー』みたいで好き。本当はすごい笑って過ごせる才能があるのになあ、って自嘲気味に笑って溜息つくのが良いよね。

 

会話のセンスも好き。俺田島列島先生大好きなんだけど近いものがある。

助けたい子(斎藤さん)が不良に絡まれてて、「悪者から助けて仲良くなる黄金パターン!」って台詞、もう黄金パターンってふかわりょうしか使わんだろ。好き。「この不良たち、集まったら強くなるキングスライムタイプだ」って形容も、負け犬が弱いながらも世界を楽しんでる感じするよね。お笑い芸人的な感性かもしれない。嫌なことも笑いに変えていくあがき。嫌なもんは嫌ではあるけどね。

その後結局凄んでも不良は逃げてくれなくて、こっちが逃げるというダサさも良いよね。ダサい人好きなんだよ。ダサい人って一生懸命なのでかっこいいんす。

 

不良から逃げたのがきっかけで一緒に御飯食べるシーンで、「高校に戻ったんならお弁当もあるはず」「だから一緒に食べよう」って教室から持ってきた弁当に箸がついてないの面白いよね。こっちは非日常に飛び込んでてんやわんや、クラスメイトを救うために一生懸命頑張ってるのに、そんな気も知らない日常のスカポンタンが発生するっていうの面白い。

 

で、ここ第二幕入る直前の斎藤さんがめちゃくちゃ良い子だから本気で助けたいって決心するシーンのやりとりも、すっげぇ自然に「かわいそうで良い子」なやりとりなのが上手いよなあ。いじめられてるとかじゃないのよ。なんかいい子なの。

斎藤さんはずっと友達がいなかったけど、いつでも友達が出来ていい準備をしてたってのが伝わるんだよね。ご飯先に食べてていいよって言われたのに待っててくれたり、主人公が箸忘れたって聞いて貸してくれるんだけどその理由も「お母さんが友達が忘れたときのためにいつも2本用意してくれてる」とかこんなん友達になってやりてえ!と思うよ。

お母さんの痛い優しさって好きなんだよ。2本用意された箸を「今まで使ったことがなかった」ってのも、多分親子で申し訳ねえなと互いに思ってるじゃん。「娘に友だちが出来たらな、頑張ってね」と「こんなに準備してくれてるのに友達できなくてごめんね」とさ。そういうの、好き。

 

タイトルにもあるんだけど、冒頭に出てくる斎藤さんの遺影が暗い顔してるの。ここでもう完全に「絶対この遺影を笑顔で締めくくらせたい」と思うな。

 

ひねってなくても、助けてやりてえと思わせられたらいい話だと思いますよ俺は。

 

そして「可愛そうなあの子を助けられるのか」という第二幕から後編。

「明日目の前の子が死ぬ」という入り。

 

斎藤さんがすげえポンコツなのがかわいい。意外と食いしん坊だったり、意外と抜けてて「今からサプライズするから待ってて」って言う。バカ!言ったら意味ないじゃん!

すごい暗い子なのかなって思ってたら友だちになったら実はお喋りでよく笑う子で可愛い子なんだよ。友達にならなかったら知らなかった、だから絶対助けたいんだって気持ちが強まっていくのも良いね。

こう好きなところ列挙していって気付いたけど、やっぱ俺『ワンダー』好きなんだな。自分の頭や心の中はこんなに楽しい。それをを誰かに知ってもらいたいなあって気持ちが好き。

 

ほいでミッドポイント。

死ぬのは明日だと思ってたら未来が変わってて今日事故に合うかもしれないと気付く。

そして代わりに主人公が車に轢かれてしまう。

 

ここはジャンプ+という掲載媒体も相まって「あれ?バットエンド?もしくは片方死んで気持ちだけでも前向きに行く系?」と思った。

 

ここで入る斎藤さんの独白が良いのよね。

あんだけ食いしん坊だったりポンコツだったりお喋りだったりで楽しそうに笑ってた斎藤さんが、実は笑うのが苦手でコンプレックスだった。でも自然に笑えるようになったんだよってのがグッと来るよね。

これは主人公と同じで「本当は笑って過ごせる才能があるのになあ」ですよ。だから2人は仲良くなれたし、そういうやつがちゃんと笑って過ごせるようになったってのがもうかなりいいよね。

 

それでエンタメとしてちゃんと上手いのが、主人公が過去に戻った理由がトラックに撥ねられて死んだということと、タイトルが「遺影を変えたい」で、全然このタイミングで主人公が死んでもおかしくないフリを入れてるところですよね。

 

そしてその後結局二人とも生きてて仲良く過ごしてる。その締めくくりが

「もういつ死ぬか分からない」「でももういつ死んだってきっと」「私達の遺影は笑っている」

タイトルや最初のセントラルクエスチョンに答えながらもそれを超える答えを出してるのが本当に素晴らしい。

 

バック・トゥ・ザ・フューチャーぽくもあるけど、どっちかという『素晴らしき哉、人生!』で、あんたが(主人公が)いなきゃ遺影は暗いままだったんだよ。こんなにいい子の死に様があんなに悲しい顔だったんだよ。ほんの些細な出会いで、気持ちで、世界ってこんなによくなるんだよ!って願いですね。あんたは世界を変えられるんだよ。素晴らしき哉、人生!の逆順の見せ方。涼宮ハルヒの消失もそうですがこの手のテーマはなんぼあってもいいですからね、ってミルクボーイも言ってた気がする。

 

特にひねりもなく三幕構成に則ってガッチリ造られてるんだけど、その中でものすごい人間の気持ちがしっかり描かれてればこんだけ面白いんだぞと、絵なんかどうでもいいんだぞという、そういう原点的な良さを感じ取りました俺は。期待通りに皆幸せになりゃ良いのよ!現実なんてカスカスのカスなんだから、人なんて死ぬまで殴れば死ぬのが現実なんだから、そんなのはもう良いじゃない。漫画って信じていたい嘘をつく媒体なんだから。読み終わった後素敵な気持ちで現実に帰りたいですね。

 

お前はどうしたい。返事はいらない。

米津玄師も俺の隣でこう言ってます。

 

終わり。