見るなキタ━(゚∀゚)━!

トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

映画『マネー・ショート――華麗なる大逆転』

映画『マネー・ショート――華麗なる大逆転』見たってよ

サブプライムリーマンショックの話で全然分からなかったけどすげえ好きだった。ほんとにチンプンカンプンだったのに……。ほぼ星5でお願いします

 

あらすじ

サブプライムローンによる住宅バブルが弾けアメリカの金融機関が崩壊するまでの話。その事実にいち早く気付いた4人(4組)が崩壊を予見し大金を儲ける群像劇(でいいのか)である。

住宅ローンの債務が不履行になったときに担保として住宅を差し押さえることをモーゲージといい、その債券をモーゲージ債という。住宅の需要があがりモーゲージ債はうはうはだったが、それは見かけ上住宅の値段が上がっているだけでいつか弾けるバブルだと気付いた変わり者の金融トレーダーがいた。

なので誰もクソほど下がるなんて思ってない債券を利用して金融トレーダーは保険をかけることを思いつく(CDS)。住宅の価値がクソほど下がったら(モーゲージ債が紙切れになったら)貸し付けてる投資金融からお金回収できなくなるので、その時は代わりにお金払ってくれませんか?勿論それまでは保険料払いますから。という保険。銀行側は住宅の価値が下がるなんて一ミリも思ってないない、モーゲージ債は超安全な債券だと思ってるので「しめしめ、保険料だけがっぽり儲けてやるぜ」と考え契約成立していく。

こんなことをしていると知った銀行マンが自分もCDSにベットしたいとヘッジファンドをやってる会社に売り込みをかけ、世の中の不正は許さねえみたいな変わり者の会社に現況を伝える。変人ヘッジファンドたちはそんな訳無いだろと思いながらも実際に今住宅市場がどうなってるか調査をした。

時を同じくして若い投資家2人もひょんなことからこの事実を知り、知り合いのマネーゲームに嫌気が差して自然派になっちゃった元トレーダーと連絡、どうにかCDS(保険の契約)を取ろうとする。

彼らが住宅市場を独自に調べていくとすでにローンの不履行は始まっており住宅価値が下がるのは火を見るより明らかだった。それなのに下がらない住宅価値に、周りの人間はCDSにベットしてる主人公たちを馬鹿にしこんな無駄なことはもう辞めようという。本人たちも不安になってきたが、もしかしたらという思いの元実際に金融市場を回している銀行マンや投資金融会社が集まるフォーラムへ参加するためラスベガスへ向かう。

なんと銀行マンや金融会社の人間は本当に現況に気付いていなかったのである。それどころか金を儲けられれば何をしても良い、気付いている人間も別に「今」証券が売れれば後はどうなってもいい、と考えていた。

そんな現実を見た彼らはCDSが確実に大金をもたらす保険だと確信する。

しかしそれは同時に莫大な金を担っているウォール街の破滅、サブプライムローンの破綻、失業率は一気に増え死者も大量に出てくる、暗黒時代の到来を意味していた。

予想通りモーゲージ債はゴミクズになり、債務不履行CDSの価値は上昇、最初からベットしていた4人(4組)は大金を得ることとなる。

だが、こうなることを分かって不良債権を売っていた証券会社たちは自分たちもCDSで不況を乗り切り、保険料だけ貰ってた会社も潰れたらアメリカ金融が破綻するということで国の介入が入り難を逃れる。

結局何も知らない投資家やサブプライムローンで半ば騙されていた人達、移民や貧困層などが一番被害を受けただけになり、儲けた4人も虚しい金を手に入れて世を憂うのであった。

 

というような感じだろうか。

正直「証券ってなに~?」「債務ぅ?」というレベルだったので、数時間調べたあともう一度見るという暴挙に出ました。そんなことをしてる場合ではないのに。「クソ…なぜオレはあんなムダな時間を…」の三井くんの気持ち。

 

感想(前置き)

好き嫌いを語らうので、嫌いとか言ったりこうした方がもっと良いのに、というけど俺が好きな料理の味付けの話で一般論として語ってはないので大目に見てね。特殊論です。

 

感想

シン・ゴジラ』。何が好きか考えた結果、シン・ゴジラに近い面白さだったのだろうなあと思った。

いつもミクロな視点で生きることについて語る話が好きだと言ってるんだけど、それとは別口にカタストロフが好きらしいですね。この作品の半ばで村上春樹の「人々はみな心のなかでは破滅を望んでいる」というような言葉が引用されるけれど、まさにそれで、俺は世界の破滅を見たい。世の中が狂ってしまうのを見てみたい。

主人公たちはどんどん勝利に近づいているのに、世界は破滅へのカウントダウンを刻一刻と鳴らしているってシチュエーションが好きだなあ。『三体Ⅱ』で「水滴」と呼ばれる敵の探査機がやってくるんだけど、みんなそれを良いものだと思ってる中、一人だけがこれはマジでやばいから備えとけっていうエピソードがあるんだけど、あれも好きなんですよね。みんなが楽観してる中、数名が終わりを予感して逆境でも主張し続けるの好き。それこそ『シン・ゴジラ』もそうだしね。しかも結局は「ざまあみろよ」とはならずに、分かってても痛みはある、分かってたからこそ無力感があるってのが良い。いつも俺が言ってる良いものとは逆になるんだけど、良いんだよね。

後はその「終末の過程」を専門用語でまくし立て、全然意味分からないけどとにかくやばい、上層社会のバトルがなんか好き。やっぱ世界政府みたいなのが「世界が滅亡しようとしてるんだ」「どうする?」みたいなのって憧れるし、その下で生活している無辜の民、家族達の話が挿入されるのって良いよなあ。

サブプライムローンの実態を調査するために実際に家を訪れてめっちゃ強面の男が出てくるシーン好きなんだよね。いかにもパッと見は高収入ではない感じの人が出てきて、でも子供もいて家賃もちゃんと払ってるしやっと家が買えて、なのに大家は犬の名前で登録されてローンの支払は滞ってる事になってる。「俺たち家を追い出されるのか?なあどうなんだ?」って聞かれる。けど調査してる人も助けに来たわけじゃないから何も言えないって悲しさが好きだなあ。見て見ぬ振りしかできないし、人は生きてるし。

その後の格付け会社と不正を許さないマンとの問答も好き。格付け会社はクズ債券にも高評価を付けるけど、そうしなきゃ他の格付け会社に仕事を取られるから、私は悪くないわって言う。この仕方ないけど仕方ないじゃ済まない、末端で巨悪の片棒を担いでるのに「私にだって生活はあるのよ」と言ってしまう可哀想さ、でもこの人一人をどうにかしたところで何にもならないやるせなさ。良いよね。

同じようにクズ債券を売ろうとしてることをジャーナリストに伝えるけどジャーナリストもそんな反骨精神見せてクビになりたくない、家族も養わなきゃいけないっていう、そういう奴へのどうしようもない憤りが好きだ。答えがないじゃんコレって。この映画ではなかったけど、だからこそそういう生活を背負ってしまい結果的に悪になってしまってる人達の分まで身を挺して戦う主人公を見てみたいなあ。

個人的にはこういう人達を咎められないけど、だけどデカい悪に負けてほしくない、直接じゃないからって他の誰かを踏みにじって自分だけは自分の幸せを守って安全圏にいるなんて嫌だなあとは思う。捨てることや孤独が一番怖いからこそ捨てることと向き合えるやつが好き。

ちょっとズレたか。

上記の話に付随させると、マネーゲームに嫌気が差した自然派の元金融トレーダー(ブラピ)が、CDSの大成功に踊っている二人の若者を見て、「コレが成功するってことは人々が家を失い、蓄えを失い、年金も失う。金融トレーダーは人を数字としてしか見てないが、失業率が1%上がれば4万人が死ぬんだ」知ってたか!?二度と踊るな!と叱責するシーンは大好きです。

この後のシーン。不正を許さないマンとアジア系の証券会社の人が言い合うシーンで、証券会社の人が「人を騙してるのは分かってる。だが社会は俺を評価している。高値でね。何なら教えようか、俺の価値がいくらか。お前はいくらだ?」っていうのが本当にムカついて超大好き。人が死ぬことと人が死んでもみんなは俺を評価するって2連撃エピソードはかなりぐっと来た。人を騙したり悪いことするのなんて許していいわけないのに、金があってうまく社会でやっていけるから、みんなに評価されるからって正当化されてしまうのって腹立つよねえ。それを価値だと言ってしまうのがね。

この後は金融市場が崩壊して4人が勝つところなんだけど、そこの虚しさも良いよねえ。結局の所は叱責してきた金融関係者と同じことやって金を稼いでしまっているという悲しさ。

不正を許さないマンがムカつく証券マンを倒すのに結局自分も同じことしてるし、それで何にもならない。自分の兄が自殺したのも、語られてないけど多分お金絡みか金融絡みで、不正許さないマンはそれすらも金で解決しようとしたことを悔いるシーンや、ラストにCDSを売ろうとしない、みんなと同じになってしまうからって悩むシーン好きだなあ。

仮面ライダークウガでパンチにパンチで返すのは嫌だって願って非暴力を説いてた五代雄介がずっとパンチで敵を倒すしかなかった、そしてラストバトルでは大泣きしながら敵を殴ってた、あのどうしようもない悔しさが大好きなんだよねえ。憎む力で戦うしかないってのがね…。

 

話は変わるけど、小難しい話が出る度に第四の壁打ち破って「まあ意味わからないだろ?でも良いのさ、金融機関の人達はわざと意味がわからない言葉を使うんだ」とか言ったり、サブプライムや合成CDOがどれだけエグいものか説明するのに、女優とかコックとかギャンブルとかが急に始まる演出が面白かった。小気味いいし「分からなくてもいいんだ」って言ってもらえると視聴者のこと考えてるなって思う。ちょうど意味分からんって時に挿入される、タイミングが完璧だった。中国人がこっち向かってあいつが言ってることは全部ウソとかって話しかけてくるの好き。

 

今度は話はかなり戻るけど、最初にサブプライムローンの異常に気付いたメタル好きの義眼の人が、人とうまくやっていけないってのが好きだった。子供時代のシーンで目が取れるってのが衝撃だし、上の人からめっちゃ叩かれるシーンで、本当のこと言ってるのに「皮肉か?クズが」みたいに言われる悲しさ。愛想が悪いから伝わらない悲しさが好き。『月光条例』の月光みたい。

「人は価値判断を専門家に委ねたがるが、その専門家は事実や調査結果とは無縁の人物だった。彼らが選ばれるのは堂々して親しみやすいからだ」って台詞が良い。愛想のいいやつに良いように弄ばれるんだっての好きなんだよねえ。『ワンピース』のシーザーとかクロコダイルもそうだったし、『甲鉄城のカバネリ』の美馬様も表向き英雄なのムカついていいよねえ。

不正許さないマンが好きだったのも「嘘をついて人を騙してる奴らに怒ってるわけじゃない。嘘つきが成功したことは一度もないからだ」ってのもさ、「なんであんな奴らのいう事聞いちゃうんだよ!あんな奴らがこっちに利益をもたらしたことなんて一度もないじゃん!なんでもっとみんな考えないんだよ!なんでみんな立ち上がらないんだよ!」っていう人類への期待やだからこその悔しさが行動原理になってて良かったんだろうなあ。こいうのってネットだと叩かれる傾向にあるけど逆張り気取ってる癖に意外と「和を尊べや迷惑かけんなや」派が多いからな)<(悪態つくんじゃないよ!)俺は大好きです

 

まとめ

大きな、組織や機関、機構といったものの癒着などによる悪意が好き。「上が言ってる。私は従ってるだけ。仕方ないじゃない」「みんなやってる。こういうものだろう」。

似た意味で金だけが価値だと思って人間を数字としてしか見てない奴らがムカついて良い。金もある意味で「大きな機構」だ。

それに腹を立てる人が居たのは良かったなあ。不正許さないマン含めそういうやつが序盤は世間で鼻つまみ者として出てくるのが良かった。とっつきヅライ嫌な奴っぽく出てくるの。

そしてエンディングというか、今みんな笑ってるけど終末に向かうよって道筋がハッキリ見えるのが良い。期待感や予感は大事だ。

 

余談

一回見て好きな話っぽいのに何やってるか分からなくて我流で調べた結果を添付。多分理解が間違ってるところもあると思うけど、調べる前よりは分かりました。

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絶対合ってねえ~~

でもまあ債券すら分からないよりはマシ!

 

終わり