見るなキタ━(゚∀゚)━!

トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

映画『夜のピクニック』

映画『夜のピクニック』見あひた。

面白いとかじゃないんだけど、要素と登場人物が好き。判断難しいけど星4~5かなあ。

 

あらすじ

この学校の一大イベント、一日掛けて80キロ歩く歩行祭で、3年生で今年最後の歩行祭となる甲田貴子は自分である賭けをする。それは異母兄妹である同じクラスメイトの西脇融と話をすることだった。

貴子の友達も融の友達もそれぞれ好き同士だと思って色々計らうが別に恋愛じゃないというのとお互い頑固であったりお互い嫌いだろうと思いこんでいたりでなかなか喋る機会が訪れないまま残り数キロメートルとなる。

しかしなんとか最後の最後にぎこちないながらも2人で喋る機会があり心が溶けてみんなで完走する。

 

……群像劇で図太いストーリーがあるわけじゃなく、「一緒にただ歩く」ことを通じて友達のことを知りそれぞれの思いが重なったり交錯したりする話なので、すごくあらすじ書きにくい。なのでこんなもんに留めておく!(書けないわけじゃないよ。留めておくんだよ)

 

感想(前置き)

自分の好きなこと嫌いなことをはっきりさせて自分の描く物語に活かすのが目的の感想ですのでよしなに。

 

感想

すげえ面白いわけじゃないし、ところどころでテーマみたいなのが散り散りと語られるので「こうしたら面白いのに」とかじゃねえですね。もしかしたら造形の深い人ならば良し悪しがあるのかもしれないけど、あんまり通ってきてないタイプなので。

 

俺は青春ものってすごく好きで、「なんでこんなに歩くの?」って切れながら「だるいよねえ」って愚痴って、でも誰かは告白したり夜なのに元気に走り回ってる人みて笑っちゃったりどうでもいい話したりするのがなんか良いんですよね。

こういう行事って乗り切れるのは陽キャなんだろうけど、でもやっぱりクラスの端っこにいるやつでもどっかでちょっとなにか期待しちゃうじゃない。それが物語ともなればさもありなん。話逸れちゃうけど、装置として、例えばみんなが行事やってる時に好きな女の子と2人きりで学校から抜け出したらそれはそれでめちゃくちゃ物語じゃん。でも行事も行事でなにか物語があるじゃない。そういう期待感がすごく好きなんだよね。お祭りもそうね。

この作品で言えば、妙にぐっと来たのが今まで歩行祭を完走できたことなかったハードロックヘビーメタルオタクの男の子とあらゆる男とあざとく付き合っては別れを繰り返す媚び媚びの女の子が最後に音楽の趣味があって楽しく話してるのなんかすげえ好きなんだよね。媚びて短期間の恋愛してた子が顔とかステータスじゃなくて素直に好きなことを喋れる人と出会うってのがいい。

 

結局この作品のデカいテーマってよく分かんなかったんだけど、すごく悩んでる人がいてその脇で大した悩みもなさそうな元気な子とかいて、そういうのがいいなあと思えたりワイワイ盛り上がってるのが単に好きなんだなあ。

歩くというのも、喋るのに対面じゃなく顔も見ないけど、同じ目的で同じことをしているという行為もいいと思う。

あとは個人的に自分も3日で100キロを数十人で歩くイベントしたことあるから思い入れしちゃう。

 

好きな話は、融くんの友達がこどもをおろした子と関わりがあった、というエピソード。言い寄られてたけど、最初に相談相手として話し始めたから付き合うことはなくて、その後に堕胎の話を聞いてタイミングや順番が違ったらこんなことにはならなかったのになあ。という話。相談相手として出会ってなかったら、もしかしたら付き合っていて、堕胎するような事態にはなってなかったかもしれない。

後悔しようが何を思おうが「そう」でしかありえないけど、でも例えば運命の人と思えるような相手でももし違う順番で出会っていたら好き同士になってなかったかもしれない、なんて考えてしまうよねえ。そういう後悔めいた話は悲しいというか切なくて良い。

同じように未来と過去と現在というような時間を意識させる台詞があって、ラスト付近で貴子と融が仲良くなって「青春だね」と言うんだけど融が「これが将来では青春になるのかなあ」みたいな(うろ覚え)ことを言う。この今だけの輝きや匂いを感じさせる台詞がぐっと来た。きっと、未来でもいい思い出として残って人生を形作るけど、同じ匂いはしないでしょう。青春って切ねえんだわ。そんな空気は大好きですね。

 

そんな大したことじゃないようなことで、みんな言葉をつまらせたりそっけない態度取ったり大人ぶったりしてる、十代の「下らないかもしれないけど、これが世界のすべてなんだ」ってめちゃくちゃ愛おしいのよねえ。

 

ティーンエイジャーが夜に歩くのも、このなんでもないの日々に何か起きて欲しいドキドキとワクワクの期待感があって好き。でも「夜好性」とか呼ばれる流行りの音楽は突っぱねてるぜ。逆張り人間なので、流行っちゃだめなんですよ…。みんなで夜を駆けちゃだめなんです。与えられた夜に喜ぶな。(面倒くさい御人…)

 

まあ難点をいうと異母兄妹の感情って感覚で理解し難くて、『水は海に向かって流れる』もそうなんだけど「へえなんかそういう感情になるの?そうなんだ?」という頭で理解する形になるからあんまり乗り切れないのですよね。「自分の父親が不倫してたのがあの子の母親で、ということは怒りや恥じもあるけど兄妹だし…」と頭で感情リストを編み上げてメモを取るみたいな…。本人も「どうとも言い表せないこの気持ちに対してどうしよう」だとは思うんだけど。

 

あとは空気読めない杏奈ちゃんの弟にすこしムカついたけど、実は杏奈ちゃんの手のひらの上だったってとこでスーッと氷解したからいいアイディアだなあと思った。一緒に歩きたかったけど歩けなかった離れ離れになった友達がこっそり罠を仕掛けとくみたいな関わり方良い。

 

他には誰が誰を好きとか、叶わないのが分かってて普通の雑談の中で告白して「冗談だよ」とか言うのとか、そういうベタなんがめっちゃ好きっす。

 

ただ俺こういう群像劇とか人物描写の解像度がかなり低いと思うので「最高!マックス星満点!」とか言えないんだろうな。

 

終わり