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トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

『チ。地球の運動について』感想

ビッグコミックスピリッツチ。地球の運動について』の感想です

 

あらすじ

時は15世紀。異端者は燃やせ。神学最強の時代。

主人公は元々孤児だったが要領や頭もよく、世間から評価も高い神学を専攻し、つつがない人生を送っていた。趣味で天文学もやっていたが父親に「異端だからやめろ」と言われ、人生を神学に捧げようとしていた。

ある日父親に、元異端者で改心したフベルトさんの身元引受けを頼まれフベルトに出会う。なんとフベルトは改心なんぞしておらず、やり残したことがあると言って主人公に「天文をやれ!」と脅しをかける。

脅迫され仕方なく天文観測に付き合った先で、主人公は天動説に基づく惑星の動きは美しいか問われ「美しくない」と答え、異端も異端な考え地球のほうが回っている「地動説」について知る。そして安定な神学への道か、己の信じる異端な天文学か、どちらを選ぶべきか悩み始め…

 

一話はこんな感じ、のはず。まとめ方下手~~~

 

感想(前置き)

自分の言葉で自分の好き嫌いを伝えたい!だから鋭くなっちまう。歯に衣着せぬ物言いになんだかなぁと思ったらご勘弁。一晩ぐっすり眠って大好きな人のことを思い浮かべて忘れてくださいね

 

感想(本番)

これマジで面白い。

Twitterで作者が二話載せていて最初は、「絵も下手だしマイナーなやつのよく分からんネットの漫画マニアとかヲタクとか一部に受けが良いだけの過激なことをリアリティと謳ってるしょ~もね~漫画だろ~~?」と思って読んでみたら

これマジで面白い。

まず主人公がちょっと鼻持ちならない嫌な奴なんだけど、一番好きな学問である天文学は権力によって辞めさせられているという第1幕のセットアップからして最高なんだよなぁ。

主人公はあんまり良い出自じゃないけど、要領が良くて、どうやったら大人(社会)に気に入られるか分かってる。だから周りの奴らをバカだと思っているし、ちょっと嘘を吐けば言い逃れできるのにそれもせず火刑に処される異端者を見下している

けど実は自分も天文学が大好きで、本当は続けていたいのに社会的に立派である父親に「それは神学にとって邪魔だからやめろ」と言われて「…はい」と従ってしまう

もうさ、この時点でこの作品が向かう先、最低でもこの1,2話で向かう先が見えるじゃない。

「本当にやりたいことを貫く」

この時点でその方向性が見えてるじゃない。もう最高だよね。

自分に素直に生きてそのせいで生きづらそうなヤツを横目に「なんでもっと上手くやれないんだ」「頭下げれば済む話じゃねえか」「そんなにしてまで守るプライドじゃないだろ」

そう思いながら自分の中の燻っていた熱い思いがグツグツ煮えたぎり始める話、いいですね~。

 

天文学をやめろ」と言われて頭では分かってるけどふと夜空を見上げて吸い込まれてしまう。「いやいや駄目だ」って思っても心が空中へ飛んでいく。こういう揺らぎ、葛藤好きだな。

道端で焼かれている異端者を見て「しょうがない。逆らったあいつが悪いんだ。しょうがない」と自分に嘘をついて納得させていく行為も素晴らしい。

やっぱね、命は大切にしようねみたいに言うけどね、俺はもう命より大事なものがある話って大好き大好き大好きなんだよ。そういうやつの話が燃えるし心が高揚する。大好きなんだ。特に周りから見ればバカな行為であればあるほど激しく燃え上がるよね。

 

主人公の心を変える役の天文に命かけるフベルトさんが主人公を脅すシーン。ここで好きなのは、っていうかいいなと思うのは、フベルトさんが脅すことで主人公があっぷあっぷしてかわいいというか面白いリアクションが見えるところ。

ここまでは、とはいえ、主人公はまだ他人をバカにするだけの嫌な奴だけど、このシーンで高感度上がるのよね。ギャップでね。

この後フベルトさんお気に入りの観測所行くときも、はじめ主人公は「絶対行くもんか、行っても良いことなんてない」と言ってたのに次のページで「来てよかった!!」って言ってんすよ。やっぱ嫌なヤツや固いヤツの気持ちがぐっと砕ける瞬間ってぐいっと引き込まれる。

そんで、フベルトさんによって地動説の話が展開されていくんだけど。

ここの問いかけもかっこいいのよ。

フベルトさん「この宇宙は、美しいか」

主人公「美しいかなんて個人的感覚で学問とは関係ない」

フベルトさん「答えを避けているな。君は美しいと思ったか?」

って聞くの。

誰かじゃない、どこかの正解でもない、「君はどうだ?」聞くの、今まで「良い子ちゃんでいた」という情報も相まってめっちゃぐっと来るのよ。「お前自身はどうだ?」って問いかけ好きなんですよ。うろ覚えだけど映画『パーフェクトワールド』でも宗教上の理由でハロウィンできない主役の子供に父親代わりの誘拐犯が「宗教は関係ない。お前に聞いているんだ」みたいなシーンがあって、あれも好きだったなあ。

 

ほいで、一話終わりにタイトルがドーンって出るシーンがあるんだけど、ここまじでかっこいいよね。

「え、地球?」からの、それが意味するところ、どれだけ危険な思想で、しかし美しく甘美なる理屈か

そして「これを『地動説』とでも呼ぼうか」の高揚感。すげえよ。

 

 

こっから第2幕に入るんだけど、改めて王道でしっかりまっすぐ描く。三幕構成を意識するのって大切だなーと思いました。

 

主人公がこんだけ言われてもなかなか信じようとしない。けどどんどん信じてしまいそうになる過程が良い。頭で分かって心で分からなくなって、ちぐはぐなマーブルハート、引き込まれるね。

好きな台詞、主人公のこんな異端な研究して怖くないのですかに対してフベルトさんの

「怖い」「だが、怖くない人生などその本質を欠く」

ってのもその通りだなと思わせる。いい台詞。

 

主人公をかばって死に、しかし満足して笑うフベルトさんもいいし、その後の主人公の自分に素直になるというカタルシスも超でかい。気持ちいい。

2話の終わり方「この世はバカばっかりだ」「でも気付いたらその先頭に僕がいた」という一話冒頭に返ってきて変化を見せるのも好きだし、「そして今から地球を動かす」というかっこよさもいい。

 

やっぱ何度も言うけど、こういう正面からたった一つ誰に何を言われようと信じていたい信念を貫く、貫こうとする話大好きなんだよね。それが師匠というのか、はぐれものな、いわゆる社会の外側、負け組とされている、見下していたような人間の生き様によって心が変化していくの、マジでいいんだわ。

 

というわけで1巻買ってまだ3話以降は読んでないのでこれから読もうと思います。

 

終わり