見るなキタ━(゚∀゚)━!

トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

映画『クレヨンしんちゃん――激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』

映画『クレヨンしんちゃん――激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』見た。

クレしん映画としてはここ最近の中でダントツで面白い。引っかかる点もあるけど加点が多くて補って余りある凄み。星5!

 

あらすじ

子ども達の自由な落書きのエナジーで成り立っている空中都市「ラクガキンダム」。しかし今の子ども達はVRタブレットに夢中で落書きをせず、ラクガキンダムは滅亡の危機に瀕していた。ラクガキンダムの防衛大臣は自国を思うあまり、落書きをさせない大人を黙らせて子どもに無理やり落書きを描かせるという強硬手段にでる。

それはまずいと思ったお姫様が描いたものが実体化する秘宝「ミラクルクレヨン」を宮廷画家に渡し、これを地上の人間で唯一使える「勇者」に届けてラクガキンダムの未来を託すよう願う。

一方その頃地上では何も知らずにしんちゃんが愛しのななこおねーさんと食事の約束を取り付けて有頂天。

しかしそこにラクガキンダムの兵士たちが降り立ち春日部の大人を壁に閉じ込め、子どもたちを連れ去っていく。

ラクルクレヨンを託された宮廷画家はしんちゃんが伝説の勇者であることを知り、しんちゃんにクレヨンを渡し遠くへ逃がす。「再び春日部に戻ってきてこの町を奪還してくれ」と。

しんちゃんは遠く離れた地でミラクルクレヨンによって産まれた仲間たちと春日部を、ひいてはななこおねーさんを救うために歩いてゆく。

その道中で春日部のおばあちゃんちに行ったまま帰ってこないお母さんを探しに行きたいユウマ君と出会い、行動をともにし落書きたちと一緒に春日部へ向かう。

いよいよミラクルクレヨンを使った奪還作戦を開始。なんやかんやありつつほとんどの人間を救うことが出来、しんちゃんは大人たちから崇め奉られる。そしてしんちゃんのママ達が捕まっている最後の牙城ショッピングモールに出向こうとする。

しかしまだユウマくんの母親は見つかっておらず、ユウマは単独で母親を探しに行きその道中でラクガキンダムから地上に逃げ出したお姫様に会い勇者のもとへ連れてってとせがまられる。いなしつつなんとか母親を見つけるがミラクルクレヨンがないと母親を助けられないので途方に暮れる。

一方その頃、ショッピングモールでしんちゃんはお母さんを助けたあと、ミラクルクレヨンを落としてしまう。そのミラクルクレヨンを落書き仲間の一人であったぶりぶりざえもんが拾い、なんと敵と交渉して引き渡そうとする。

しかしその交渉場所でユウマとばったり出会い、彼の母親を助けるためにミラクルクレヨンをユウマに渡し、ぶりぶりざえもんは捕まってしまう。

お姫様はミラクルクレヨンを使えるので、ユウマの母親を助け出してくれるが代わりにクレヨンを使い切ってしまう。

仲間を失いながら敵軍と戦い勝利を手にしたしんちゃんだったが、落書きのエナジーを失ったラクガキンダムの城が春日部に落ちてくる。このままだと街が潰れてしまう。民衆はミラクルクレヨンでどうにかしろというが、ミラクルクレヨンが無くなったことを知り大バッシング。

そこに遭遇したお姫様がみんなで落書きをすれば城はまた浮くと言うが、落ちてくる城を目の前に全員逃げ出す。

かすかべ防衛隊や幾名かは勇気を振り絞って落書きを書こうとする。

しんちゃんは人波に流された広場で一人、消えかけているぶりぶりざえもんに会う。ぶりぶりざえもんが最期に良いことをしたことを知り、消えていった仲間のためにも落書きを書く決意をする。

運動場のライン引くやつで町をキャンバスに絵を描き始めるしんちゃん。

それを知ったユウマは町内放送使って住民に絵を描くのを手伝うように呼びかける。しかし自分の身が第一の住民たちは避難を完了しており今更命を懸けたくないという。それに怒ったユウマは「お前らしんのすけに助けてもらっておいて、自分たちは何もしないのかよ」と吠える。それを聞いた人たちは勇気を持って町に舞い戻りみんなで巨大な落書きを完成させ、城を再び浮遊させる。

全てが終わったあと、みんなは日常に帰っていき、しんちゃんはななこおねーさんと念願のお食事会をするのであった。

 

みたいな。

 

感想(前置き)

好き嫌いを知り、嫌いな物語はどうやったら好きになれるかを考える。それが物語を作る練習になるとピクサーちゃんが行ってました。そういう個人的な感想です。よしなに

 

感想

とにかくすごかった。久しぶりにすげえ行くところまで行ったなあって映画を見た感じ。

ものすごい大枠から話すと、ギャラクシー・クエストとかワンピースみたいな、愉快なオープニングで始まって仲間と因縁を作って置きながら後半でスケールクソデカくして一気に回収するというサイッコーの構成。やっぱ小さいスケールから街一つ巻き込むほどの大スケールになるって映画見ると「旅したなあ」「最初はたった一人の日常だったのに、遠くまで来たなあ」って感じがしてすげえテンション上がる。藤田作品とかもそうね。でも一番近いのはやっぱワンピースかな。ドレスローザ編の、最初はよく分からんトーナメントとかルフィがやってるし、玩具にされた街の人々の話とかやってんだけど最終的にはドフラミンゴの鳥かごを皆で協力して止めつつルフィが死闘で決めるっていう、あれが一番近い。本当後半めちゃくちゃアガる。最近の、特に漫画だとどうしても最初っからエンジン全開で行かないと読まれないからこういう構成なかなか見かけないんだけどやっぱカタルシスとか満足感が莫大。インド映画のPKとかも溜めて溜めて全回収って構成で面白いんだよね。

 

何から言葉にしていけばいいか…。

序盤はちょっと気になる点もあるので、逆にどこから俺のトルクがぐわっと上がったかって話だな。

やっぱり「どっちをとっても何かしらの痛みがある」という択が出てくると、覚悟や何を大事にしてるかという信念の話になってくるので燃える。

だからラクガキンダムの主要メンバー、首謀者の防衛大臣やお姫様が地上に降りてきて「散ってたものが集まり始める」あたりから段々燃えるね。

特にスイッチが入ったのは、ユウマくんがお姫様とあって「勇者の元へ連れて行ってください!」と圧されてる時に母親を発見。そこにちょうどミラクルクレヨンを持ったぶりぶりざえもんに会うシーン。まずぶりぶりざえもんに「しんのすけを連れてきてくれ」母親を助けたいんだ、ってユウマがなぜここにいるのかというそもそもの行動の悲願を頼み、その直後に敵側から地位と名誉OR友達を助けるかって択が掛かるのがもう本当いいのよ。基本的にぶりぶりざえもんは欲に塗れたやつで喉から手が出るほど地位と名誉と金が欲しいんだけど、直前のユウマのお願いが完璧に決まってる。そもそもユウマがみんなで本丸を攻めようという流れに対して孤独、というか孤高に母親を助けようとしているからぶりぶりざえもんに対する「お願いだよ、しんのすけを連れてきて」というのがものすごい沁みる。みんなが一丸になってる中で、自分は自分の力で誰の手も借りずに願いを叶えようとしてるから、助けてあげてよって思わされる。だからここでぶりぶりざえもんがユウマの方を選ぶ葛藤は「こっち選んでくれてありがとな」という気持ちと「よく葛藤に打ち勝ったな」という称賛で溢れてグッと来るんだよねえ。

ここからこういう択の連続。ユウマが母親を助けるのに、王族であるが故にミラクルクレヨンを使えるお姫様がお母さんを助けてくれる。お姫様にとっては自分の国や家族をミラクルクレヨンで救えるかもしれないのに(ミラクルクレヨンに関しては気に掛かる点がちょいとあるけど置いといて…)ラクルクレヨンの消失と引き換えに目の前のさっきあったばかりの男の子の母親を助けてあげる。自分も大変なのに相手を思いやれるお姫様の優しさががっつり描かれてて大好き。

しんちゃんの方はしんちゃんの方で雨が降ることで水に濡れると消える落書きたちが消えるか戦うかの二択を迫られる。雨の降る屋上でしんちゃんが単身敵につっこみ、偽なな(落書き)がちょっと雨に晒されるのを躊躇うシーン見た瞬間に「己を顧みずしんちゃんを助けるシーン見たい!」と思ったらちゃんとそれが描かれてて本当良かった。ちなみに屋上の、誰もいないちっちゃい遊園地が動いてるのとステージを引きで映して手招きがぬるっと出てくるホラー感もすげえ怖くて良かった。

偽ななこが消えたショックを台詞にしないのもすげえ良い。雨に打たれるしんちゃんの画で言葉以上に語ってるよねえ。

その後の民衆によるバッシングも最高です。この辺からマジで目が離せない。落ちてくる城をミラクルクレヨンでどうにか破壊してくれよとか勝手なお願いをしてくるが、ミラクルクレヨンはもうない。ユウマが来て母親を助けるのに使っちゃって、周りの皆が「何自分勝手なことしてんだよ」「皆で協力しなきゃダメだろ」って、保身を正論で包んで好き勝手いうの良い。みんなが頑張ってること知ってるから「ちょっと話くらいきいてやってくださいよ」って思える。バッシング受けて謝るユウマと「私が捕まったからこんなことに」って庇うユウマの母にしんちゃんが「オラも母ちゃん助けた。ユウマもお母さん見つかってよかったね」っていうの、一番欲しい言葉じゃん。誰も悪くなくて、愛してる人を身を挺して頑張って助けたかったって行動の結果に、周りは掛ける言葉もなくて、そんな中でしんちゃんはちゃんと自分じゃなくて他人を思いやれる言葉を掛けてあげられるのが最高。しかもその様子をみてるお姫様が「選ばれた勇者はちゃんといい人だった」って微笑んでるのもまた良い。これからの問題に対する安心感がある。

B'zの『ねがい』の「僕は僕に君は君に、拝み倒して笑えりゃいい」って歌詞が大好きなんだけど、結局しんちゃん、というか主人公格の人間は他力本願じゃない、降りかかる試練を一身に背負って向き合ってそれぞれの願いを自力で叶えようとするから尊敬できてかっこいい。

 

この後の逃げ惑う群衆の中でお姫様が「落書きをすればラクガキンダムは助かるんです」って叫ぶのもいいよね。一つに、逃げ惑う群衆も自分や自分の家族を守りたいけど、お姫様だって自分の家族や国を守りたい。そのために声を張り上げてるのに誰も聞いちゃくれない悲痛さ。もう一つは、「全員が協力すれば助かる道がある」っていう択があるのがいい。全員が協力すれば助かるが協力者が少なかったら滅びる。自分だけ逃げれば確実に助かる。というゲーム理論の択。囚人のジレンマってやつ。「お互いが協力する方がしないよりいい結果が出るにも関わらず、協力しないほうが利益を得る状況では互いに協力しなくなる」。ダークナイトのラストもそうなんだけどさ、人の思いはそんな狡くてダサいジレンマなんかには負けねえって展開大好きだ。大変でももっとより良い道があるのになんでそれを皆目指さないんだよ!って悔しさとかも入ってきて好き。

 

しんちゃんが溶けてくぶりぶりざえもんとする会話もすげえ良くて、まず場所が、民衆から離れてる静かな場所ってのがいいよね。不思議な場所で決意をする。

会話がさ、「ユウマくん助けたんだね」「あいつらはナンバー2にしてやると言った。ナンバー1以外に興味がないからな」っていう全然本音を言わないぶりぶりざえもんというキャラね。超良いわ。というかすべてを通してぶりぶりざえもんのキャラ好きで、強いものの味方だし欲望に素直だけどここ一番ってところで誰よりも勇敢な選択が出来るやつ、そして恥ずかしくて人のためなんて言えない「全部自分のためだ」なんて言っちゃうやつ、お前みたいなやつが一番好きだ。

しんちゃんもしんちゃんで、ぶりぶりざえもんに「誰かいなくなったのか?」って聞かれて「ううん、別に」って答えるのよ。偽ななこいなくなってるのにみんな本当のことを言わないのよ。言わないからこいつらの本当の思いを感じられる。これは作品作りの一つの技術だよね。

 

ここから決意して大落書きが始まって、ユウマとお姫様が民衆に訴えるシーンね。ここはもう本当に、ユウマの言葉が良くて良くて…。「お前らしんのすけに助けてもらったんだろ!皆で協力するときだって言ってたじゃんか!皆でやれば助かるのに、ずりぃよ!」って言うのがね、この大人ぶった言い訳を、「ずるさ」を突きつけてやるのがドキッとするでしょ。口先だけで何も向き合ってねえじゃねえか。やらない言い訳はいつでもいくつでも見つかるんだよ。でも助けてもらったんなら返せよ!って言うのがいいわ。ユウマもしんちゃんに助けてもらってる、というか一番欲しい言葉をもらってるから、しんちゃんが今でも頑張ってるのを知ってるから、「お前らもだろ!」って言うのが燃えるよねえ。

 

そんでこっからの「祭り」がなんか分からんけど妙に感動するんだよな。やっぱ崩壊に対して祭りという「祝い」で対抗してる、楽しさがいいんだろうな。防衛大臣がすげえ楽しそうに落書きしてるの見ると、今まで国を思っていたとは言え外道に手を尽くして笑顔を忘れてたギャップでグッと来る。そして俺はお姫様好きすぎるのでめっちゃ可愛い動きで落書きしてるのが可愛すぎてもう…。そこはさすがラブライブの監督だぜ。

 

この祭りのいいところは「町くらいぶっ壊しちまえ」って開放感だな。序盤の「道端に落書きなんか出来ないご時世」ってのもフリになってて、「道がないところはどうすれば」「関係ない、壁も屋根もどこもかしこもキャンパスに出来る」っていう、人間が作り出したしょうもないルールというか既成概念をぶっ壊す快感がある。この町も空に浮かぶ王国も救えるなら、人が元気で笑ってられるなら町が落書きだらけになるくらいどうってことないだろってみんなで祝う。

とっても大切なことのためにルールを破るっていうの大好き。泣いてる人の涙を止めるために、苦しんでる人のために、既成概念やモラルや道徳なんてしかつめらしい大人の言い訳だろって方向性は本当に好きだ。気持ちよく笑うための行動。

 

そんでパンツ(落書き)の消滅と巨大ぶりぶりざえもんの活躍。ここはあともうちょい乗れなかったが笑

パンツになんか悲願があればなあ。「また遊びたいね」とかずっと役立たずだったけど最期に自分が活躍できる時が来たんだ、嬉しいなあとか、あればラストも燃えたなあ。一番いいタイミングではあるけど、もっと盛れるよな。「誰とも別れたくない」というのがフックになってて、これ後から書こうと思ってるけど、個人的に絆を深めるロードムービー部分が弱いと思ってるので「別れたくない」が刺さりきらないんだよな。ま、後述。

巨大ぶりぶりざえもんもぶりぶりざえもん自体が大好きだからさ、「言われなくてもがんばっておるわ!」と言いながら頑張ってるのとか好きだし、そもそもここまでの流れが最高すぎるのでその全てを繋いできた最後の地点だから否応なくテンション上がるんだけどさ、「なんで」ここでぶりぶりざえもんなのかってがハッキリしないからちょっと刺さりきらない。

クレヨンしんちゃんという作品的にぶりぶりざえもんなのは分かるし、ぶりぶりざえもん以外にないのはないんだけど、「救いのヒーロー」ってのがクレヨンしんちゃんっていうハイコンテクストで語られてるからちょっと説得力弱いのよね。これはしんのすけ自体にも言えるけど。

ブタのヒヅメがエンディング似てるんだけど、あれは世界を滅ぼすものとして実体化したぶりぶりざえもんが、しんちゃんと喋って産まれた意味をもう一度問い質される。つま「あんたは人を困らせる前に産まれたんじゃなくて、救うために産まれたんだよ」って産まれた意味に還った結果、ラスト脱出飛行船を持ち上げる。本当に欲しい物が分かったんだ、教えてくれてありがとうの手助けなわけよ。だからものすごい説得力がある。ラクガキンダムの方は必然ではあるけどもっとクサいくらい意味が欲しい。ただ代案が思いつかないから、俺の負けだよ…。

 

エピローグで好きなのは、ユウマくんとお姫様ね。この二人が可愛くて可愛くて…。アイパッドにお姫様が落書きしてるの得意げで楽しそうでひたむきで可愛い。みんなの絵がデータ上に保存されてて、町中の落書きは減ったけど、本質は変わってないんだよってのも好き。

なんかさ、ユウマくんはお姉さま受けのよいクールショタでしんちゃんの世界観と真逆だからめちゃくちゃ映えるんだよね。おバカで、でも子供の象徴みたいなしんちゃんと現代っ子の融和が、俺はクソジジイなので現代っ子を舐めてるが、それとしんちゃんがぶつかることで「なんだよ見どころありまくりじゃん」ってなるのがいいんだよね。お姫様も意思強くて行動力あるけど、子供っぽく素直で感情表現豊かで可愛いし。二人ともデザインが良くてね。伊集院炎山くんとかいけすかねえけどカッコいいやつ通ってきてるし、お姫様もタレ目でかわいいっす…。可愛いしか言ってねえ…。

追記で可愛いポイント。勇者の元へ連れて行ってと強情なお姫様に弱々しく主張するユウマくん。ぶりぶりざえもんを見かけて何故かビビりユウマくんの袖を引っ張るお姫様(さっきの強情さとのギャップかわいい)。逃げる時はいつでもお姫様の手を引いてるユウマくんも良い。

 

ラストしんちゃんの当初の目的であるななこおねーさんとの会食で終わるのも気持ちいいよな。ヤキニクロードも小さい願いから始まってデカいスケールになって悲しさとか寂しさとか色んな喜怒哀楽体験するけど、最後は最初の願いに還るっていう日常サイズの特大の幸せで終わるってのスッキリしていいよね。そしてもういないけど心のなかには住み続ける一緒に冒険した仲間たちもいたんだよっていう。ここらへんは完璧ですね。

 

序盤について

冒頭の映画感はすごい好きで、ラクガキンダム内の対立と脱出を描きながら間にOPクレジットが挟まるの、映画っぽくてすごい良いなあと思ってワクワク。

ラクルクレヨンを渡すくだりも別にいいんだけど、やっぱしんちゃんが春日部を奪還しようとロードムービーするところかなあ。

後半行くと「あ、戦争描きたかったのね」と分かるけど、子供に配慮した結果だろうけど封鎖感が弱くてさ。「ななこおねーさんを早く助けなきゃ」という動機で歩き出すんだけど明確なタイムリミットがないから緊張感が薄い。しんちゃん自身も町がどうなっているかってのを眺望として眺めてるだけだし。例えば壁に閉じ込められた人は一定期間後消えてしまうとかあったら早く助けなきゃ!ってなるかなあ。

ユウマくんが付いてくる時に「春日部は戦場だ。覚悟はあるか」みたいな台詞があるけど、例えば春日部でスニーキングミッションしてる大人が捕まるとか、危機感あるエピソードがあれば戦場っぽさ、非日常と化した場所感がでる。自衛隊とかのリアル感で重さを出そうとしてるけど、どんどん捕まっていく人が増えてるよとかで殺伐感欲しい。

 

あとはパンツのくだりでもちょっと言及してるけど、ロードムービーの絆部分。ロードムービーでみんなで楽しく冒険するの自体は大好きなんだけど、喧嘩か約束があると消える時に燃えるなと思う。偽ななこの最初はしんちゃんが思ってたのと違うのが出てきて嫌悪感あるけど、ひたむきな愛情がそれなりに伝わって仲良くなるの好きだけど、、いやまあいいや。好きです。(あんまり細かい話ししても結局泣いてるから詰めても仕方ないなと急に気付いた)

まあでも約束かな。約束があると選択になっていいよ。ユウマくんと仲間たちとに関しては例えば、ユウマくんはあんまり笑わない子だったけどしんちゃんたちといる時は心から笑えたとか、違う自分に出会えたエピソードとかなにか貰ったエピソードがあると絆が増えてエンディングの、ユウマくんがしんちゃんたちの幻想を見るくだりももっと切なくなるよな。

追記。最初に大人を開放した時に喋るパンツたちをみてビビる時に、ユウマくんが「すぐ馴れますよ」っていうんだけど、そもそもユウマくんは最初から落書きを受け入れてたので(一応6歳設定だからかもしれないけど)、最初は受け入れてなくて段々受け入れてくるという変化が描かれてると良いなと思った。

あとパンツが水に怯えるシーンがあるから一回、水に怯えてしんちゃんを裏切るというか助けに行けないってエピソードがあると最期に命かける時にグッと来るよなあ。

 

そんで序盤ノリきれなかった一番の原因はしんちゃんが勇者であることがハイコンテクストで語られてること。

しんちゃんはミラクルクレヨン使えるから勇者なんじゃなくて、誰よりも人のことを思って自由な気持ちで落書きできるから勇者であって欲しい。

ユウマくんが崩壊する城を嘆くお姫様に「でもしんのすけならなんとかしてくれる」っていうんだけど、説得力が弱い。例えばしんのすけはみんなが後ろ向きになってしまうどんな状況でも笑って楽しく落書きができる、とかって具体的なエピソードがあれば説得力あるけど、この映画内だとミラクルクレヨンが使えるからすごいってエピソードしかなくて、どう落書きに対して他と違うのか、なぜ落書きの勇者として選ばれたのかって納得できるエピソードがない。しんのすけクレヨンしんちゃんという作品の主人公で今まで映画とかアニメとか見てるでしょってのが前提にあって、俺はそういうの好きじゃないのでもっと期待感が欲しかったなあ。

春日部を救うのにしんちゃんが必要というのも、そもそもラクガキンダム側のゴールが見え切らないし、最初の命題は「自由な落書きこそ大事で無理やり描かせても仕方ない」だったので、それに対してしんちゃんは「自由に気持ちよく描くのが落書きの本質じゃないの?」って言えるキャラとして置かれて欲しい。「労働のように落書きを描かされる」という主張がある春日部に、「落書きは自由だぞ」という主張を持つしんちゃんが出向くから期待できる。その道筋が見えないとエレクトせんのよ。

ラクルクレヨンは自由な気持ちを持ってる人が使えるみたいな台詞があるけど、その自由な気持ちって具体的になに?っていうのを見せてほしかった。現状ミラクルクレヨンがとにかくすごくてしんちゃんは使えるから勇者ってだけになってるのが乗り切れない。

だからまあ後半はすごい好きなんだけど、序盤はしんちゃん側も敵側もお互い目的自体ははっきりしてるけどヒートアップはしない目的だから(もっとやることのスケールがでかくなるとか「これはまだ第一段階…」とかではないから)ちょっとだるい。主張も若干はっきりしてない。

 

あと防衛大臣側がミラクルクレヨンを手にして何をするつもりだったのか微妙に分からなくて、最初はミラクルクレヨンを使って軍隊を手にし下々のものに強制労働を強いるつもりだった、というのは分かるんだけど、もう強制労働出来てるし城が落ちてくる段階では何の役に立つのかってのが分からなくてなんで防衛大臣はそれほどにミラクルクレヨンを求めてるの?と疑問だった。

 

という、長々とした感想。

 

正直めちゃくちゃ面白かったのでまあいいっちゃ良いんスけどね。この構成だと序盤がタルくなるのは仕方ないことだし。ワンピースも序盤たるいやん。藤田先生もスロースターターと言われてるし、仕方ないのは仕方ないのでマジでただただサイコーだったんすよ。

やっぱ大量のキャラがそれぞれの思惑で戦いつつ、最後には一つの目的に向かって協力し合う話って盛り上がるよね。ワクワクが止まんないよね。あと友達になるんじゃなくて同じミッションを協力してる戦友になるって距離感がすげえ好きだからユウマとしんちゃんがべったりじゃないのはそれはそれで好きなんですよ。ハンターハンターの利害で協力してるけど、でも見捨てれねえ仲間でもあるっていう関係性な。宇宙よりも遠い場所の四人もそんな感じじゃん。違う動機で同じ目的を共にする戦友。仲良しだから認めあってるんじゃなくて、隣を歩いて一生懸命やってる、行動で示してるから信頼してるっていう距離感。口数少なくても通じ合ってるやつ。最高。

 

久しぶりに最高って思える、「おお、映画見たぜ」っていう旅感溢れる映画見えて良かったです

 

終わり