映画『河童のクゥと夏休み』
映画『河童のクゥと夏休み』見ちょぱ
2年前のじいちゃん死んだ時、通夜直前に見て以来二度目の視聴。星4上げちゃう。ガッとは来ないけどじんわり来るね。
あらすじ
蹴り投げた靴がクラスの女の子にぶつかっちゃって周りの男子に「ひゅ~気があるの~?」とからかわれると「誰があんなブス!たまたま当たっただけだ!」とか言っちゃうようなTHE・男子な小学生の男の子が主人公。その少年が水路にあったなにかの化石を持って返って水で洗ってみるとなんと河童だった。
その河童は数百年前、江戸時代に父親を侍に殺されて、その時に起こった地震に飲まれそのまま化石化していたのである。
少年は「くぅ」という鳴き声から河童に「クゥ」と名付け、他の人にばれないように家族でその河童を飼うことに決める。河童のクゥと少年の家族、そして飼い犬は河童の仲間を探したり相撲をとったり遊びながら絆を深めていく。
ある時、仲間探しに遠野に行くも、そこに住む座敷わらしに「河童はいない」と言われトボトボ帰宅。しかもその日に河童の存在が記者にバレてしまう。
噂はまたたく間に広がり、毎日毎日家に野次馬が押し寄せるようになり、テレビに出演してくださいなど強引な日々が始まる。
ある日仕方なくテレビに出演したが、ゲストの民俗学者がなんと河童の父親を殺した侍の子孫で、切り落とされた父親の腕を持ってきた。クゥはそのことに動揺し、念力を発動、カメラや照明を破壊し逃亡する。
助けてくれる飼い犬と共に奇異の目で見つめる人間から逃れようとするも、どこにも人間がいない場所はなく、途中で飼い犬も轢き逃げに合う。どうしようもなくなったクゥは巨大なタワーに登ってビル街を見つめながら「もう父ちゃんのところに行きたい。飛び降りて楽になりたい」と願う。
しかしその時空から龍が舞い降りて、人間世界の上空を舞う。その姿を見たクゥはもう少し生きてみようと決意する。
その後、家族たちは開き直って普通に暮すが、クゥのもとに仲間の妖怪から一通の手紙が届き、クゥは家から出ることを決める。
「また会おうね」という約束をし、クゥは沖縄に旅立つのであった。
みたいな…。プロットが複雑やな…。
感想(前置き)
好き嫌いを話す場。真剣10代しゃべり場ですここは。カレーが好きマンゴーが嫌い、みたいな好みの話をするだけなので、まあ癪に障ったらすまんね。
感想
この話です!ドーン!みたいなのがなくて、ちょっと難しいんだけど、全体的にキャラの描き方やリアクションがリアルですごい良いです。河童を見つけた時に母親は「いやだいやだ近づかないで」って言うんだけど父親は好奇心旺盛に見たり、父子男同士で分かり合う感覚とか、妹がカタツムリ持って来た時河童に「マイマイか」「ばーか、カタツムリです!そんなのも知らないの~?ねえお母さん」って言った後母親に「いや、あの、マイマイとも言うのよ」って返されるのとか、すげえリアルだよね。
特に妹のリアクションが俺は好き。河童が妹のカタツムリ食うとかあって、妹はずっと河童のこと嫌ってたんだけど、ある日河童がその時のお詫びに綺麗な石を渡すのね。その石を妹は「ありがとう」も言わずに見惚れるようにずっと見つめてふわふわしながらソファに座ったりして。それでなんか嬉しさが伝わるのがいいし、妹のキャラらしくてすごいなあと思った。しかもそれでも河童に対する対応はそんなに変わらなかったのに、最後の最後お別れする時に「やだ~」って泣くんすよ。めっちゃ好きじゃん!ていう、俺が子供の頃に来てた大好きな親戚のおじさんが帰る時の頃を思い出して「すごいリアルなリアクションだなあ」と。
あといじめの描写がめちゃくちゃ上手くて、ひどくないんすよ。ひどくないのに心がウッとなる。クラスの女の子が本読んでたら黒板消しを机にぽんと飛ばされて、いじめっ子がただクスクス笑ってるとか、履こうと下においた靴を蹴られるとか、リアルなんだよなあ。すごい。
息子が遠野に一人で行くときの母親の感情もすごい良い。息子からしたら気遣いとかちゃんと準備したの?とかすっげえ鬱陶しいんだけど、母親からしたら小学生が新幹線で一人旅に出るのってすごい怖いんだよね。気が気じゃなくて、なのに出発の日も息子は振り向きもしない。父親はそんなに心配してなくて「恥ずかしいんだよ」なんて軽く言うから「もう」って殴っちゃう。こういう「自然~」と思わせられるリアクションって良いよねえ。
あとクゥの純粋無垢な感じも好き。初めて見た海で「こんなしょっぺえ水の中には魚はいないだろうな」「何いってんだよ。クゥが食べたのも海の魚だよ」「ええ~」とか、知識はないけど敬意はあって、自然に近い妖怪のやつ感が強くて好きなんだよなあ。
それと夜中クゥが小さい電灯だけの夜の町をこっそり歩くんですが、その異世界感がすごい好き。飼い犬とテレパシーで会話したり、ぽつんぽつんと明かりがあるのが、人間の世界と人間ならざるものの世界の交わる所、時間帯って感じで良い。
飼い犬のエピソードも好きで、まあこれは前見た時もTwitterに書いてあるから詳しくは書かないけど、昔の飼い主に虐められて外に出て今の家族に拾われて幸せだったけど、何か他にできることあったんじゃないかなあって後悔しながら死ぬのが可哀想というか、「そんなことないよ」って言ってあげたくなるから好き。
最初に言ったように話のテーマがどかんとあるわけじゃなく、物語的にはピークになる龍降臨の部分も難しい。俺の解釈だと、妖怪は住む場所もなく人間に駆逐されて続けて、クゥもそれを悟って疲れて死にたくなるけど、人間なんかに駆逐されない、人間如きには触れられもしない人知を超えた存在はいるぞ!どうだ!おら!という龍だったのかなあと。これは俺が都市伝説を専攻してたのもあって、どんどん人智の及んでないファンタジーな領域がなくなってる、想像を超えるものも場所もない、見えない営みなどないんじゃないか、って解釈をしたんですね。そこに「そんな訳無いだろ!」って龍が出てくる。クゥのお父さんが龍を呼んだと言ってるので、「人間に負けるわけないから頑張れ」という父親からのエールのだったのかなと。
でその後は、一緒に暮らせない異なるもの同士が同じこの世界に住むこととはって話かな。
誰も仲間がいないやつが一人で戦うことの怖さと強さをクゥに教えてもらって、ヒロインの子と仲良くなれるのとか、ヒロインの子はヒロインの子で自分の居場所を探し続けたクゥを見て自分も自分の居場所はないなんて悲観せずに自分で飛び込んでいかなきゃって思うのとか良い。
一番グッと来たのは、お別れして結局別々に暮らすことになってしまい「一緒にはいられないのか」と思わせながらも、クゥっていう人間に貰った名前があるんだ、っていうオチが一緒に暮らす以上の繋がりを感じさせて良かった。人間世界でのことで、なにか残ることがあるというのは良い。
まとめると、リアルかどうかは別として「リアルだな」と感じさせるリアクションや、だからこそ主人公や妹が大人になった時、未知のものにどう対応するか考えると面白かったり、あとヒロイン出るシーンは軒並み好きだった。公園のベンチで木漏れ日の中とか場所がいい。河童とお別れする時にコンビニの前で待つのも、知らない町のなんでもないコンビニの前っていうのが良いんだよなあ。特別じゃない特別な場所。
終わり