見るなキタ━(゚∀゚)━!

トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

映画『ムーンライズ・キングダム』

映画『ムーンライズ・キングダム』見たんだってさ

犬ヶ島』『グランド・ブダペスト・ホテル』とかのウェス・アンダーソン監督。絵は好きだけど話は…ってのが多かったけど、これはすごく好きでした。星5

 

あらすじ

1965年のちっさい島での出来事。孤児で尖ってるからみんなに嫌われている主人公の少年が、両親は居るけど両親のことが嫌いで尖っている少女に出会いお互い恋をする。

ボーイスカウトをやっていたある日、主人公はキャンプ場から脱走し、大人たちや他のボーイスカウトに追われながら、その少女と逃避行する。

逃避行の中で2人はお互いを知り合い愛を深めていき、目的地であったこの島の原住民が働いてた入り江に到着。「ここは僕たちの場所だ」と入り江に名前をつけて2人で愛を交わす。

しかし結局は大人たちに見つかり少女は家族のもとに返され、主人公の少年は里親に見放され少年院に送られることとなる。

2人とも周りの大人達、両親や少年を一時的に預かってくれている警察と話をし、まだ子供だからと言う理由で諭される。

嵐がこの島に向かってきているというニュースの中、主人公と同じボーイスカウトのみんなが主人公の様子を見て「アイツのことをなんでそんなに嫌うんだろう」「あいつの手助けをしてやろう」と決意。再び少年と少女の脱出計画を立てる。

こんどは福祉局やボーイスカウト団体の大本みたいな人たちまで追いかけてきて、最後には雷が落ちる嵐の中、主人公と少女はある塔のてっぺんまで追い詰められる。ここから飛び降りれば死ぬかも知れない。けど飛び降りるしか無い。

最後の決断を下そうとした時、主人公を預かってくれていた警察が「自分が里親になる」それでどうだ、と語りかけてくれる。

主人公はどうにか踏みとどまり、少女も家族と腹を割って話したことで前より仲良くなった。

巨大な嵐が島の形を変えて、2人が愛を誓った入り江も沈んでしまったけど、前よりも島は豊かになったとさ。

 

みたいな

 

感想(前置き)

出力をするための感想なので俺にとっての好き嫌い、ここはもうちょっとこうのほうが好きとか言う。

 

感想

主人公と少女が子供としての居場所もない、逃げ出そうにもここは小さな島でどうにもできない。そんな中でお互い共感しあえる子と出会えた、というプロットがすでに好き。

2人の子供には夢中になれることや譲れぬことがあって、2人の世界があって、そのためになかなか人と上手く話を合わせられなくて、カッとなって手が出ちゃったり、なぜそうしたか言葉にできなかったりする。

ただそんな言葉に出来ないことを言葉に出来ないままで語り合える相手に出会う。世界から開放される。2人だけの世界が生まれる。というのが好きです。セカイ系

主人公の男の子の、ちょっとズレたサバイバル技術や島の地図を作って先住民の入り江に向かうことも、女の子がレコードやお気に入りの本を持ってきて旅のお供にしたり双眼鏡から覗く景色を「遠くにいるのに近くにいるみたいに感じる魔法」と言ったりする理屈じゃない、言い換えれば「子供っぽさ」がすごく愛おしく、そしてそれを2人なら分かち合えることも愛おしい。

男の子がピアスを作ったんだと釣り針にタマムシかなんかを付けて、女の子が素敵といい耳に刺す。

大人や周りの子どもからしたら「そんな事してなんになるの」「釣り針を耳に刺すなんて頭おかしいんじゃないの」「大人になったら後悔するわよ」ってなものだけど、2人にとってはその瞬間はあまりにも「本物」の時間。

2人とも「遠く」に冒険へ行くことを願うのも、本当はそんなものないんだけど、でも願ってしまうのは、ここじゃないどこかならありのままで居られる場所があると祈っているから。

 

そういう子どもたちを大人が「子どもがかかる感冒だ」って蔑ろにせずに、物語の中盤、2人が連れ戻された後話し合ったり、最後に養子になるように手を伸ばしてくれるのがいいなあと思う。

子どもがやったことが正解か不正解か、答えを教えるのではなく、自分たちで答えを出せるまで待つのが大人の役割な気がする。二択でもないと思うしね。

 

印象に残ってるシーンは、2人の手紙のやりとりが明らかになる場面。

「また暴力をふるってしまった。なんでわたしは」みたいにやってしまったことと後悔の冒頭だけ語るのがいいなあ。「弟がやかましいのには同情する。けど君の親はとても」「あなたは孤児だけど両親のことを忘れないでいて。それは」とかって理由が省かれているのが、言葉じゃなくて気持ちが想像できて素敵。余地もあって良い。

 

あとはウェス・アンダーソンらしい色調と画作りがやっぱり綺麗で好き。カラフル。まあそこに関して言えば犬ヶ島グランド・ブダペスト・ホテルのほうがより強めで描かれてて良いが。

 

ムーンライズ・キングダムの意味に関しては、俺としては「夢は夜ひらく」ってことかなあと。あの入り江の小ささがいいよね。すごい小さいんだけど、子どもの目線で見ると、めちゃくちゃ広大で自分たちだけの場所なんだよね。そこに自分たちだけの王国と名付ける。

実際の、映画の中の意味としてのムーンライズの意味はどうでもよくて、あの2人が話し合って「月が昇る王国」と名付けた過程がきっとあって、それが素敵だなあと思う。夜に話をしただろうし、女の子の方は本も好きだったし、男の子は歴史が好きだったから「太陽はみんなのものだけど、月が昇るこの浜辺は僕たちだけの王国だ」とかなんとか。あったらいいなあ。

 

まとめ

2人が引き離された後、主人公に警官が「君はきっと私より頭がいい。けど頭が良くても間違えることはある。君はまだ12歳だ。莫大な未来も広がっている。物事には時間が必要だ。危ないことから子供を守るのが大人の仕事だ」と言われる。

それはそれで正しい。けど誰もが間違いだって言っても、本人にとっちゃ何も間違ってない気持ちで、それを否定されるいわれはない。

猫が通るような塀の上を歩くのは危ないけれど、「そんなことしても危ないだけでいつかバカなことをしていたと分かる」と言われて、何が分かるのだろうか。

そういう子どもの気持ちが描かれているってのが大好きで仕方ない。

本人たちだって、この恋愛感情も、2人が起こしてしまう暴力沙汰と一緒で、分かってるけどどうしようもないことに過ぎないのかも知れないけど。それでも。

「分かってるのにどうしようもないこと」

これもまた描かれているとぐっと惹きつけられるものですね。

 

これが誰にも、特に大人に救われないまま行くとエヴァみたいな話になってしまうのだけど…。

 

この手の子供の話や恋愛の話って大好きなんだなあ

 

終わり