見るなキタ━(゚∀゚)━!

トイレの「小」の方で流せるタイプの文章を書きます。そしてお前を許さない。

映画『Ink』

映画『Ink』見ちゅあ

前半意味分からなくて、どうにかモードをちょっと難解なSF小説読んでる時のモードにして見て凌いでたら後半すごい好きだった。脳内補正がすごいから公平に行くと星3くらいかなあ、と思うが、俺の中の愛が「贔屓目で見て星4~5で良いんじゃない?」って言ってる。

 

あらすじ

現実世界とは少しズレた世界の住人である、人にいい夢を見せる人たちと悪い夢を見させる組織が敵対している。

ある時、悪い夢を見させる側の醜い顔をした男が、自分を組織の上層部に認めてもらい美しい姿になるために、ある家族の娘を誘拐し連れ去り、現実の娘は昏睡状態に陥る。娘の父は妻を愛していたが、妻が亡くなり酒に溺れ祖父母に娘の親権を取られていた。しかし娘が昏睡状態になったことでもう一度あってくれと祖父母に言われるが、「親権を剥奪したお前らに今更何も言われる筋合いはない。こちらは何十億という金を動かす仕事で忙しい」と突っぱねる。

一方では連れ去られた娘を助けるために、いい夢を見せる人たちが現実世界に干渉できる凄腕の仲間に手伝ってくれるように交渉し、父親にアプローチを仕掛けようとする。

そして娘を連れ去った醜い黒ずくめの男は、娘を引き連れながら上層部に娘を献上するためにいろんな世界を巡り、「コード」なるものを集める。その過程で、娘を助けようとした「語り部」と呼ばれる女性も引き連れていくことになる。

娘の父は、仕事をこなしながらも頭の中で家族のことを追憶する。貧乏でからかわれ恥ずかしく悔しい思いをした少年時代。それを取り戻すようにビジネスマンとして大金を動かすようになれた毎日。その中で出会った素敵な女性のこと。

いい夢を見させる人たちが娘と娘の父を救うために現実に干渉し、事故を起こし父親を娘の入院している病院に入れる。

黒ずくめの男は準備をすべて整え、美しい姿を得るためにとうとう上層部に娘を差し出す。上層部に殺されかけ虫の息となっている「語り部」は黒ずくめの男に「本当にコレで良いのか」と問いかける。

同時に目の覚めた娘の父はオフィスからの電話に逡巡する。同じ病院で眠っている娘の元に行くか、数十億の案件のために会社に戻るか。

黒ずくめの男は目の前で殺されかけている娘を見つめる。黒ずくめの男は思い出す。自分は娘を選ばず会社を選び後悔から酒に溺れ、醜い姿になりこの世界に落とされた、あの子の父であることを。

そして上層部に逆らい娘を助け出したことで、現実世界の父親も娘の病室へ駆け出し、娘は目を覚ます。

 

みたいな話だと思う。映画のまま書くと書きにくいからめちゃくちゃ改変してる。

 

感想(前置き)

自分の好き嫌いをはっきりさせるために書いてます。よしなに。

 

感想

とにかくね、ラスト、自分の嫌いな醜い姿を美しくするために何の罪もない女の子(娘)をチケットのように上層部に差し出して美しくなろうとするんだけど、「自分の醜さのためだけに女の子を犠牲にして良いのか?」と飛び出していくのが本当の本当に好き。

語り部(多分奥さん。俺が人の顔認識できないので分からんけど)に「あなたは醜くなんてない。とっても美しいわ」と言われる。魂とか人の在り方として、人が人を好きになるのは醜い整ってるとか、そんなことじゃなく、魂の美しさであるってのが良い。

自分のためじゃなくて相手のため、というか「自己満足」のために動くという情動がある、これだけで正直100点上げられるくらい好きです。

娘を差し出して美しい姿になっても、きっと心のなかでずっとそれは引っかかって、その美しさや富や名声があってもずっと心に風は吹く。それより醜いままでも娘を助けてあげることでニッコリ笑う。娘も最後に「パパだよね」って言ってくれる。この一連の流れがすごく良い。

 

それから、主人公である娘の父の、妻との出会いからの一連のエピソードもかなり好み。

まず主人公はめちゃくちゃ「金!金!金!」で動いていて、酒で無理やりごまかしながらずっと働いてて、そのせいで妻に「もう辞めましょう。家族はどうするの」とか問われるんだけど「俺は今デカい金を動かしてるんだ!」って家族がばらばらになるまでずっと仕事し続ける。でも実は子供の頃、主人公はすごい貧乏でクラスメイトにバカにされてたり、スーパーでお金を払うのに小銭で細かく払う姿を女の子に見られて恥ずかしかったりしてる。それがトラウマでお金にこだわってしまう。

このエピソードがすごく好きで、子供の頃の大したことではないのかも知れないけど、本人にとってはとても大きな事で、悔しくて恥ずかしくて、その反動で大人になって地位や名誉を手に入れ大事なことを失ってしまった人ってすごい好き。

そうして金は手に入れて子供の頃のトラウマを払拭できたはずなのに、どこか心が虚ろな毎日で妻と出会い、下らないけど満たされた日々、ひまわり畑を走り回るって映像もすごい好き。

子供が生まれて、あんまり子供好きじゃないから遊びに誘われても乗り気じゃなくて、けど娘がごっこ遊びしようと「モンスターに襲われてるの、助けて」と父親を見つめる。なかなか父親は乗ってくれなくてだんだん声の小さくなる娘。主人公は気落ちしていく娘を見てやけになって「わー!」とめちゃくちゃ乗ってあげる。すると娘はとっても楽しそうで…、ってこの話も好きだなあ。しかもこれが最後に黒ずくめが自分を思い出して上層部に逆らう時にフラッシュバックするのもすごく良い。見た目の美しさも大層な地位も、些細な問題なんだよ。

事故で妻が搬送される時に救急隊員に「必ず助かりますから離れてください」と言われてそばに居なかったこと。そのまま会えなくなってしまったことも、「なんで最後までいてやれなかったのか」「せめて彼女を看取れなかったのか」って悔しくて好き。

 

基本的に、主人公を取り巻く妻と娘の物語は全部好きだったし、「失うものばかりじゃないでしょう」というような最後の奮起、醜い自分になるか、自殺するような人生を選ぶかは「あなたが選べる」「そんな酒に溺れるような人生は選ばなくても良い」というメッセージもとっても好きです。

 

あとは設定がよく分からなかったけど、現実世界に居るけど現実じゃない(現実の人々に干渉できない・相手からは認識されない)というのが若干『都市と都市』を思い出して良かった。異世界感とか裏通り感、誰も知らない道を行く感じとかは好き。悪い奴らの顔の静止画を貼り付けてるデザインとかも良い。張り付いた悪い意味での「親しげ」な笑顔のメタファーなのかなと思ったり。

理想を言えばもう少し薄暗くて湿っぽい空気感のほうが好きだけど。

 

ただ俺が冒頭で言ったように、序盤マジで分かりにくくて、分かりにくいだけならまだしも主人公が誰か、主人公が何をしたいのか、誰が何をする話なのかってのが全くわからないので最初の方はマジで苦痛。設定も我慢してみたらどうにか理解できるけど結局黒ずくめが集めてた「コード」がなにかとか、良い奴らが何をしたくて戦ってるのか、リスクとリターンはなにかとか、そういうエンタメの部分が弱いので諸手を挙げて「面白い!」とは言えない。だけどいっぱい好きです。

 

まとめ

心に風の吹く男が自分のためじゃない自分が本当に大事にしたいことのために動いて心から笑えるようになる話はいいですねえ。やっぱり好きだなあ。

 

終わり